若年者に急増しているスマホ斜視

突然、眼が内側に寄ってしまう急性内斜視という病気は昔からありましたが、ここ数年、小児から若者の年代にこの急性内斜視が増加している傾向があります。

元来、急性内斜視の原因は明らかではなく、片眼を隠すことにより両眼視機能が遮断されて起こるものと、身体的・精神的ストレスによって起こるものがあるとされていました。
しかし最近では近距離でのスマートフォンやゲーム機の過剰使用が原因との報告があります。

何故、スマートフォンやゲーム機の使用が原因になるのでしょうか。

①近距離で物を見る時は眼の中の水晶体を膨らませてピントを合わせる「調節」という機能が働きますが、その状態が長時間に及ぶと元にもどりにくくなる。

②調節という機能が働くと、両眼は内側に寄る「輻輳」という状態になり、調節とともに輻輳の状態も元に戻りにくくなる。

つまり、スマートフォンやゲーム機の過剰使用は、まだ未発達の10代の若年者では調節および輻輳の異常を引き起こし、内斜視を発症する恐れがあるのです。
読書では起こらず、スマートフォンやゲーム機で起こるのは、動画を近距離で長時間見るという事に関係しているのではないかとも言われています。
昨年から日本弱視斜視学会が、急性内斜視とスマートフォンの過剰使用との関係について調査を行っているところですが、近距離でスマートフォンやゲーム機を使用する場合には、距離は30㎝以上離し、使用時間も4時間未満が望ましいとされています。

当院においても5歳の女児が突然内斜視を発症し、脳神経科も受診しましたが原因不明でした。親御さんからスマートフォンを見ている時間が長いと話を聞き、使用を中止させると程なく内斜視が消失しました。小児の斜視の治療を多く手がけている帝京大学医学部附属病院ではスマートフォンやパソコンを1日に5時間以上使用していて急性内斜視を発症し、元に戻らず手術に至る件数が増加しています。

もし、スマートフォンやゲーム機を使用中に物が2つに見えたり、片眼でしか見てないように感じたり、眼が内側に寄ってきたように感じたら、すぐに眼科を受診しましょう。

今回は院長の姉で視能訓練士をしている春香さんに寄稿してもらいました。